借り物のネガ。

今日は午後から暗室に入る。

知人から借り受けたモノクロネガを焼くためだ。

話は少し遡る。

その知人が旅行にニコンの一眼レフを持って行くという。しかもフィルムカメラだ。そこで、ずっと使っていなかった「ネオパン 100 ACROS」を一本進呈した。

特別カメラに詳しい訳ではないその知人に、絞り優先のAモードで、8とか、5,6の数字で撮るように勧めた。

旅行帰り。お店の同時プリントで仕上げたL判を見せてもらう。どれも良く撮れていて、素敵なカットばかりだった。旅写真は人が写っているほうが楽しいと思う。後から見る楽しみが倍増する。行ってない自分が見ても、何だかうれしくなる。

その中でも一際輝きを放っていたのが、知人の甥っ子ちゃん。その愛くるしさは圧倒的なパワーだ。

ぱらぱらとみている内に、その甥っ子ちゃんが写っているもので、これ焼きたいなと思うカットがいくつかあった。「ねえ、プリントさせてもらっても良い?」と言ってしまった。

家族に渡すのに、焼き増しした後だったら良いですよ、と言ってくれた。

自分勝手に焼くわけにも行かないので、向こうに焼くコマを選んでもらうことにした。

「じゃあ、考えます」

明くる日、「これでお願いします」と、見せられたのが、自分もお気に入りのカットだった。見せてもらったときに散々良いねと言っていたので、ちょっと影響してしまったかもしれない。

ひとのネガを焼くのはなかなかプレッシャーがかかる。いつも以上に慎重に作業を進める。段階露光を経て、フィルターワークを決め、テストプリントを繰り返す。2時間くらいかけて、やっと及第点のプリントが焼けた。

その後、自分で撮ったネガをちゃっちゃと数枚焼いていく。

すると最初に焼いた甥っ子ちゃんの写真がどうにも気になり始める。もっといけるんじゃないの?と思ってしまった。

よくよく見るとコントラストが低すぎて、ずいぶん眠い。ACROSらしいと言えばそうだけれど。もう少し何とかしたい。

というわけで、最終盤になってから、データを取り直す。

じゃあ、まず全体を2号で、それから5号少々で輪郭を出して、空と白いシャツを焼き込んで…。あれやこれや試しに試して、1時間後に、これで勘弁し下さいプリントが出来上がった。これから乾燥、フラットニングして渡す予定。

気に入ってもらえるかはわからないけれど、そもそも自分勝手にお願いして、自己満足のプリントだった。これはこれでよしとしよう。

借り物のネガを焼く。これは良い経験だった。

こんな有休消化も悪くない。