熊谷聖司さんの展示を振り返ってみる。
ホワイトキューブ全体を淡く柔らかな薄緑色が包み込む。繊細なプリントに目を奪われた。
今回はサイズの小さな作品が並ぶ。
意図する色を自分でコントロールできるサイズにしたのと、小さい方が作品にあっているとの判断だったそうだ。
確かにそう思う。箱庭のような景色をぎゅっとボックスフレームに詰め込んでいる感じ。イメージとサイズ感があっている。それに家に飾れるサイズ。
プリントの細かな仕掛けも楽しい。Cタイププリントでありながら、網点のような効果を再現したり、モノクロフィルムをカラー印画紙で焼き、モノクロではなく、モノトーンにしたりと、見るたびに発見があった。
極めつけは、スライド&トークショー。
投影に合わせて即興曲が会場を包み、熊谷さんが、さらに即興で紙に書いた言葉やイラストを映像と重なるように、壁に貼ってゆく。
多層的に要素が共鳴しながら空間を作り上げてゆく。その場にいた者と物が全て参加しているような感覚だった。
これをインスタレーションとして括るのは難しい。どちらかというと、舞踏家の演舞に近い。
「これは画になるとか、こんなのじゃ画にならない、とか、そんなイメージにこだわるのはやめて、何でも撮っています」
— 熊谷聖司
語り草になるイベントだったと思う。
さて、今回プリントを一枚買わせていただいた。プリントを買うというのは、いつもながらうふふな体験だ。
あれはトイレに飾ると決めている。トイレじゃないといけないプリントだ。