下瀬信雄「結界」@銀座ニコンサロン

恥ずかしながら、下瀬信雄氏を知ったのは、今回の第34回土門拳賞を受賞してからのこと。氏は山口県萩市で写真館を営む傍ら、4×5判にモノクロフィルムで独自の視点で萩を撮り続けている。それも途方もないキャリアである。77年にはすでに銀座ニコンサロンで最初の展示をされている!

土門拳賞の一報を知り、こんな方がいらしたのかと驚いた。早速写真集「結界」を求めた。いわゆる風景写真とは違う。なんと言ってよいのかわからないけれど、「そう容易くないよ」、「知った風な口を利くもんじゃないよ」。そう言われている気がした。自然に媚びず、軽々しく礼讃せず、そんな感じだろうか。

今回の銀座ニコンサロンは受賞記念としての展示だった。精緻にとらえられたモノクロのプリントが静かに迫ってくる。もっと早く知っておきたかった。それでも遅ればせながらプリントを拝見できてよかった。

初めてお目にかかった下瀬さんは、とても穏やかで、どこまでも自然体で、少し照れ屋な一面もある魅力的な方だった。感じるのは謙虚さ。だからこそ、慣れ親しんだ萩を、「狎れる」ことなく、畏敬の想いで写真に収め続けることができるのではないだろうか。

最後に無理を言ってあるプリントを注文させていただいた。畏敬の想いを知る手本になればと思う。