岡崎正人写真展「Northern Light 光に出遭う旅」@gallery bauhaus

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ファインプリントを徹底的に突き詰めるゾーンシステム。言わずと知れたアンセル・アダムスが提唱し実践していた技法だ。何年か前に、研究会代表の中島秀雄さんのお話を伺ったことがあって、聞きかじっただけでもそのあまりの緻密さ、厳密さにあっけにとられたのを覚えている。常用フィルムの実効感度の測定から始まり、機材感材の選別、撮影からフィルム現像、プリントワークに至るまであらゆるプロセスを管理して、マッチングを突き詰めていく技法だ。

岡崎さんもそのゾーンシステムを体現するひとりだ。しかも独自の研究で、状況に応じたレシピを数多く持ち合わせているという。ゾーンシステムは一枚一枚の完成度を最優先するので、今回の展示でもフィルムや印画紙は何種類も使い分けているのだとか。確かに、全体を見渡すとトーンばばらばらだった。なのでゾーンシステムは組写真には向かないらしい。極めようとすればするほど、その辺はトレードオフなのだろう。割り切り方が潔い。ゾーンの是非や賛否はいろいろありそうだけど、とにかく一枚に込める執念めいたものは計り知れないなと感じた。

印象的だったのは、ゼラチンシルバープリントはスポットライトを当てるとよりダイナミックレンジが広がり、印画紙のポテンシャルが引き出されるとのこと。強い光をぶつけるとゼラチン層に影ができて眠っていた像が浮かび上がるらしい。

そういえば、以前代官山にあったフォトシャトンで加納満さんの展示を見たことがあった。その時はバライタプリントを背面からスポットで照らして、透かすように見る試みだった。確かに普通に見るだけではわからない潜在する像が浮かび上がった。これはこれで面白いアプローチだなと思っていた。

かたやプラチナやサイアノは穏やかな自然光や間接光が適しているらしい。

自宅の窓際にプラチナプリントが掛けてあって、日中はレースのカーテン一枚隔てた柔らかな自然光が当たる。いつまでも見ていられる心地よさが気に入っていた。たまたまかもしれないけれど、理に適っていたらしい。

プリントは展示することで完成を見る。なるほど面白い話を伺えた。