銀塩モノクロの魅力は数あれど

林忠彦賞を受賞した「STREET RAMBLER」は、中藤さんのストリートスナップ全開で、集大成的な一冊としての魅力が詰まっている。受賞も大いにうなずける。

と言っておいてなんなのだけど、個人的には2013年の禅フォトギャラリーの展示と、合わせて上梓したこの写真集がとても気に入っている。中藤さんといえば、粗粒子モノクロで、コントラストが高い作風が信条だ。もちろんこの北海道のシリーズも粗粒子は変わらない。しかしよく見ると、中には粒状感がありながらも、中間調が豊かで、見れば見るほど味がある写真が見受けられた。とりわけ縦位置の流氷のイメージが秀逸で、オリジナルプリントはかっこよさと美しさが同居した興味深い作品だったと記憶している。写真集でもその良さは十分伝わってくる。

スパッと切り取るような瞬発力のスナップも中藤さんの魅力だけども、どこか散策的で、間のある写真も新たな魅力を提示してくれたようで面白いなあと感じていた。

少し話がそれるけど、森山大道の写真は高コントラストでアレ・ブレ・ボケで有名なのはよく知られているところだ。確かにハイライトのとびと、シャドーのつぶれを見ればその通りだ。ところが聞くところによると、いざ中間調に注目してみれば、実に階調が豊かで繊細なディテールがあることに気づくらしい。有名な人ほどバイアスがかかった状態で見聞きしてしまうもので、ついわかった気になってしまう。実際にオリジナルプリントを見たことがあっても、そのつもりで見なければ気づかないこともあるだろう。

モノクロは階調が魅力といわれている。それが全てではないにしても、モノクロ写真のイメージにおいて、階調は何かが人に伝わるための必要条件であることは間違いなさそうだ。