感想が前後してしまったけど、ようやくこの企画展にも触れておきたくなったので、雑感を少し。
まさに出色の企画展だったと思う。見えるものとしての写真作品と、見えないものとしての作家の意図やテーマ。どの作家の方も二つを巧みにブレンドしながら昇華させている印象だった。唸ることしきりな展示だった。
また図録が秀逸。鈴木理策展をなぞるような件で申し訳ないが、本当に良いから仕方ない。この企画展の経緯や狙い、各作品について丁寧に解説している。写真展の図録なのに読み物としてかなり面白い。
最初の「#1」が8年前だそうだ。その間にも写真を取り巻く環境が劇的に変化している。自分が写真を始めた5年前と比べても、フィルムや印画紙は統廃合をしながら値段は徐々に上がり、今では感材の種類が3分の1、値段は倍になった。私が常用しているコダックのT-MAX400も一本400円台で買っていたのが、800円台後半かそれ以上。あっという間に高級品になってしまった。お財布に厳しい趣味となった。
写真は機械や道具に頼るところが多い手法なので、作家は否が応でも今手に入るもので作品を作ることになる。これまで続けてきた作風や手法が同じようにできなくなってしまうこともある。作家にとっては切実なことかもしれない。
それでもまだ今は、フィルムだろうがデジタルだろうが、オルタナティヴだろうが、やろうと思えば何だってできる。考えようによっては写真史上最高の過渡期にあると言えるし、贅沢な時期だと思う。もはやフィルムかデジタルかみたいな二元論で語っている場合ではないのかもしれない。
「#3」が開催されるかはわからないが、その頃の写真はどうなっているだろうか。悲喜交々ながら楽しみではある。