三上浩+達川清『QUAU in photo』@POETIC SCAPE

 中目黒のポエティックスケープで、三上浩+達川清『QUAU in photo』を観賞した。尋常ではない作品だった。

彫刻家・三上浩氏と写真家・達川清氏のコラボレーション作品で、暗闇の中でハンマーとノミで石を打ち、その時に発する火花をバルブ撮影で一枚のフィルムに収めたもの。彫って何かを作ることが目的ではなくて、石が砕かれ、火花が散る過程を含めた彫刻を試みていた三上氏と、その過程、時間軸をフィルムに露光した達川氏との真剣勝負とも言える作品だ。

三上氏がハンマーを振り下ろすたびに火花が飛び散り、同時に石も細かく爆ぜてゆく。石は少しずつ目減りして、終いには姿を消してしまう。対峙する達川氏がその一部始終を撮影する。当然、暗闇の中ではフィルムに石は写らない。火花だけが露光される。石は徐々に無くなってゆくが、元の形そのまま、火花の集合体に置き換わる。石と火花が写真を通し反比例するように入れ替わったかのようだ。

作品づくりは断続的に数時間から十数時間かけて行われる。一度の作業は一時間半ほどが限界だそうだ。三上氏はひたすら石を打ち、それを達川氏がカメラにつきっきりで撮影する。肉体的にも精神的にもかなり追い込まれるのは想像に難くない。時にはひと塊をすべて打ち終えるのに2週間もかかった作品もあった。それは火花の集まりが正立方体を成し、かつて存在した石の形を彷彿とさせながらも、全く別のエネルギー体に生まれ変わっていた。

カメラは4×5でポジフィルム。当時ならポジは一般的な選択だったかもしれないが、ピンポイントの露出で最高の発色が得られるポジは、この作品には必然だったのではないだろうか。写真ならではの表現で、動画では成立しない。デジタルでもシャドーを拾って色ノイズがでそうだし。ラティチュードは狭いが、ハイライトに強いフィルムだからこそかもしれない。

とても強度が高く、根源的な美しさに満ちていて、じっと見つめ続けたくなる作品だった。