ブラックトナープリントがかっこいい!
コンビニのコピー機でデータ出力した、いわゆる白黒コピー。だからといってチープさを売りにしているわけではない。ゼロックスとかコピーアートっていうのがあったらしいけど、そのへんのたぐいでもない。もっとシンプルにコピー機のトナーインクの質感を活かしたプリントという印象だ。
フォーマットの違うデジカメで撮影した後、すべて2:1のアスペクト比にトリミングしている。おそらくどのデジカメでもスマホでも設定で選べない比率だと思う。ようするに撮った後に必ずひと手間加えていることになる。撮影をして、2:1にトリミングして、モノクロに変換して、白黒コピー機で出力している。
デジタルデータをインクジェットやラムダで出力する際の品質は、おのずとCプリントに近づけたいとか、バライタプリントに近づけたいという方向性になりやすい。その延長線上で、フイルムのクオリティを凌ぎたいという欲求もあるかもしれない。
しかし、吹雪さんのプリントはそれじゃない。かといってキッチュでもない。まったく違うベクトルで品質を追求している。解像度の低さやコントラストの高さも、定着したトナーのグロス感とあいまって不思議な質感になっている。バライタでもなくインクジェットでもない味わいがある。コピー用紙一枚でこんな魅力を出せるのかと正直驚いた。
それに展示方法にも特徴がある。細クギ2点留めのピンナップは、クギを半ばまで打ったあと、紙を頭側に寄せて浮かせている。フローティングピンナップ。この方法で時間がたつと、紙が湿気を出し入れして伸び縮みするうちに、勝手にまっすぐ張り平坦になるらしい。試行錯誤しているうちに発見したそうだ。コピー用紙の酸いも甘いもわかっていての展示方法だ。
吹雪大樹さんは大阪でギャラリー・アビィを運営し「HOLGA会」の会長という肩書きがある。大阪のホルガ愛好家なら知らない人はいない。でも時にそれがレッテルとなって、「ホルガの人」らしくない作品と受け取られてしまうことも少なくない。ならば、まだ知名度の低い東京でこそ展示する意味があるのではと、オーナーの篠原さんが声をかけたそうだ。
タイトルは、無人探査機ボイジャー1号に由来するとのこと。以下は吹雪さんによる展示のプレスリリースを引用させていただいた。
太陽系の最果てに雲があるという。まだ誰も見たことはないが、必ずそこにある と信じられている。 今その雲へ探査機ボイジャー1号が時速6万kmの速さで向かっている。しかし辿 り着くのは300年後。そこに何があるのか?何も無いのか? 私たちが知る事はで きないだろう。 この数十枚かの写真もそんなものだ。誰かに届く確証もなく、しかしそこへ向け て、すでに放たれている。
―― 引用: 吹雪大樹写真展「太陽系の最果てにあるという雲」
ボイジャーについてちょっと調べてみると、1977年9月5日に打ち上げられた探査機は、驚くことにいまなお運用され、太陽系の最果てへ向けてひたすら飛行が続けられているようだ。
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