泉大悟写真展「UNDERCURRENT」(2016)@月光荘画材店 画室3


ニコンサロンの「FRAME」はブツ撮りによる銀塩のソリッド(solid)な美しさを追求していったシリーズだったが、この「UNDERCURRENT」シリーズはソリッドさから離れていき、真反対のホロウ(hollow)な美しさに移行していっている。でもホロウ側に完全に行ききってしまうことはなく、虚ろでおぼろげな画面の間に、キリッとした画面が混ざり、展示として不思議なリズムを刻んでいる。

ひょっとしたら、もともと自然と反応するシーンが、多重性だったり、レイヤー構造だったりするのかもしれない。ガラス物の写り方や、レースのカーテンを挟んだイメージなど、複数のレイヤーが重なり絡み合いながら、いつか溶けて無くなってしまうような揺らぎがある。どれも一枚の中の構成要素が多いので見れば見るほど発見があって面白い。

安定感のあるファインプリントはそのままに、今までよりも薄っすらと粒状感が出ている気がしたが、狙って何か特別なことはしていないらしい。最初に覚えたプリントワーク、レシピを変えていないし、機材も変わっていないそうだ。ここは普通のカメラ好きの男性とは一線を画す。ずっと「最初」が継続しているというのは女性に多い傾向だ。身近にも同じものを使い続ける女性のカメラ仲間は多い。

余談だが、アートディレクターの平林奈緒美さんは、黒縁眼鏡に、シンプルなトップス、軍パンという定番のコーディネートを崩さないと、トークショーで言っていた。愛用の黒縁眼鏡が廃番になると聞いて、一生分の5,6個をお店を回って入手したという逸話があるくらいだ。数か月後に職場近くのローソンで平林さんを見かけた時も、確かに同じスタイルだった。

平林さんほどテンション高めじゃないんだけど、泉さんにも似た佇まいがあって、ずっと「最初」を使い続けることで「らしさ」が滲みでる人なんだろう。変わらないものは変わらない。でも変わらない物事を組み合わせ重ね合わせて、今までより少し強度を増した写真を差し出してくる。実はかなり油断ならない写真家なのだ。

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