宮田明日鹿【con/text/image】@Poetic Scape

中目黒のポエティックスケープで宮田明日鹿【con/text/image】を観てきた。稀に見るおもしろさだった。ニット作家による個展であり、傍目には写真展には見えない。宮田さんのファンであるニット好きからしても、従来の写真好きからしても、戸惑うことしきりだろう。

宮田さんは日常的に美術館やギャラリーの展示物の脇にあるキャプションを携帯電話のカメラで撮影している。あくまで備忘録なので、水平垂直など気にせずパースは適当で、自分の上半身や手の影も写ってしまっている。その画像データを電子編み機に読み込ませ、二色の糸を選び半自動で編んでゆく。キャプションの文字も、スチレンボードも、壁紙も、自身の影も、すべてが任意の二色の糸に置き換わり、いっしょくたに編まれてしまう。編みあがった一枚の作品は元がキャプションの画像とは想像がつかない不可思議な模様として立ち現れる。

展示では編まれたニット作品の左下には、元となるキャプションを掲示している。キャプションであるかのように脇に掲示されたものが実は親で、ニットが子供となる。その親子関係が妙な愉快さを生んでいる。キャプションの画像がニット作品へどう置き換わったかをくりかえし見比べるているうちに、いろいろと共通点や差異が見つかると笑えてきてしまう。テキストの部分の形がそれなりに再現されていたり、写りこんでしまった宮田さんの影のほうが強調されてしまっていたりして、その緩い偶然性や滑稽さが見る者の思考を際限なく巡らせてくれる。

宮田さんのニット作品を観ながら写真サイドでどう見立てられるだろうかと考えた。ぐるぐると思考していると、「あ、これ、ひょっとしたら新しい画像形式なのかもしれない」と思いつく。手に取れるニット作品でありながら、概念的には「.knit」という拡張子を持った新しい非可逆圧縮形式で書き出された画像なのだ。いわば写真展ではなくて写真的展といえる。これは私なりの一つの解釈で、見る人によってまったく違う感想になるだろう。特定の見立てだけでとどまらない広がりをこの作品に感じる。

作品は編まれているけど、心はほどける素敵な個展だった。それにしてもオーナー、攻めに攻てるなあ。