エレナ・トゥタッチコワ「In Summer: Apples, Fossils and the Book」@POST

POSTで開催されているエレナ・トゥタッチコワの写真展を観に行ってきた。写真集「After an Apple Falls from the Tree, There is a Sound -林檎が木から落ちるとき、音が生まれる-」の発売に合わせた写真展で、同時開催で代々木八幡のnaniでも映像作品を展示している。昨年のポエティックスケープでの個展も記憶に新しい。ダーチャの景色はどこか懐かしく、なんだかハックルベリー・フィンやトム・ソーヤを読んでいるような気分になる。

今回は新作「Treasures」が加わり、さらにわくわく感が増している。秘密の場所から宝物を発掘してくる才能は一瞬のきらめきなのだ。ロシアの短い夏。幼少期のかけがえのないひと時。その瞬間にしか出会えない宝物。箱庭のような世界。凝縮された記憶が観る者をやさしく包んでくれる。エレナの写真は清々しくもあり、どこか面映ゆくもある。シンプルに「ああ、ほんといいなあ」って素直に思える写真ばかりだ。

写真集もいい。今回はプリント付きのスペシャルエディションを購入した。白地にグレイッシュな深緑のワンポイントのデザインが美しい。仮フランス装でしなやかな張りを持たせた表紙と微塗工紙の組み合わせが手になじむ。特装函がなんとも贅沢だ。版元の「torch press」は出版ペースはゆっくりなリトルプレスながら、シンプルで良質なものを着実に出版している。注目のレーベルだ。

エレナの天真爛漫で予想の斜め上をいく発想は、自然と人を惹きつける力がある。かけがえのない才能と素養に同時代に出会えたことを心から感謝したい。

エレナ・トゥタッチコワ/Elena Tutatchikova

1984年、モスクワ生まれ、東京在住。モスクワでクラシック音楽や日本の歴史を学んだ後、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻で学ぶ。自然と人間の関わりや文化的現象を通じて、人間の記憶がどのように形成されるかに関心を抱き、地域のリサーチを重ねることで土地や個人の物語を採集し、写真、映像、音、テキストによるインスタレーションとして構成している。主な展覧会には、個展「After an Apple Falls From the Tree, There is a Sound」 POETIC SCAPE(東京、2015)、東京写真月間「To the Northern Shores」 MUSEE F (東京、2015)、グループ展「はじまりのしじま “In the Beginning, Silence was Always Silence”」Takuro Someya Contemporary Art (東京、2015)、茨城県北芸術祭(2016)等がある。

http://elenatutatchikova.com/

《プロフィール引用 torch press より 》

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