自分は読書好きではなくて、書物好き。印刷、製本、装丁など造本につい注目してしまう。潮田登久子さんのBIBLIOTHECAは、そんな書物好きにはたまらない展示といえる。14世紀頃の西洋の祈祷書や江戸時代の帳簿、個人宅の本棚など、本そのものを主題とした20年にもわたるシリーズだ。プリントの美しさもさることながら、写っている本そのものの存在感に意識が向いてしまう。
潮田さんは「ふと自分の手元にあった本の美しさに、オブジェとして本を撮ってみたいと思ったことが、このシリーズを撮り始めたきっかけでした」とステートメントで書いているが、まさしく「オブジェとして本」の魅力を引き出しているシリーズだった。
特に「斎藤和英大辞典」の背表紙のイメージはほれぼれする。タイトルの箔の荘厳な輝き、どっしりとした佇まいは、見ていて飽きることがない。本書は昭和3年に斎藤秀三郎氏による個人編纂で、和英辞典のパイオニアにして金字塔ともいえるものだ。二十代の頃は訳あって復刻版「NEW斎藤和英大辞典」にはお世話になった。なんだか感慨深い。
さて、潮田さんといえば「冷蔵庫」で衝撃を受けた人は多いだろう。私もそのひとり。何がきっかけで知ったのかはっきり覚えていないのだけだけど、冷蔵庫がただ写っているあの写真集を見る機会があり、食い入るように見た覚えがある。それからずっと写真集を入手したかったが、1996年発行で新品は見当たらず、古書も定価の2.5〜3倍の値がついていて買うのを躊躇していた。それが今回、PGIの展示に合わせてデッドストックが販売されていて、幸いにもゲットすることができた。しかも定価で、しかもサイン入り。いつになくうれしい買い物となった。
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