熊谷聖司展「EACH LITTLE THING」@POETIC-SCAPE

ポエティックスケープの熊谷聖司展「EACH LITTLE THING」。同タイトルの写真集を10冊まで出版するプロジェクトで、今回で7と8が上梓された。デザイナーの高橋健介さんに編集を一任して、熊谷さんはあまり干渉しないというスタイルをとっている。3.11以降「わたしの欲望とは何か」というテーマのもと自問自答する試みだという。

もちろん誰が編集しようとも熊谷さん自身が反応して撮影したものには変わりはない。しかし、編集の及ぼす影響は大きい。特に写真のようなビジュアルメディアは編集いかんによっては、見え方はがらりと変わる。それでもなお、拭っても拭いきれない、底に沈めても浮かび上がってしまう何か。それを欲望と捉えることはできるのかもしれない。撮影者と編集者との信頼関係があれば、編集を他人に委ねることは、写真の強度が飛躍的に高められる手段といえる。委ねるにはいろんな力が必要になる。この関係を築ける人はそう多くないように思う。

まあ、そんなプロジェクトの前提をすっ飛ばしても、熊谷さんの写真が魅惑的なのは疑う余地もない。もう、写真でしかないよという心地よさがある。おもねらず、突き放さず。ツンでもデレでもない。写真の塩梅が際立っている。写真の旨味たっぷりだ。やりたくてもこれがなかなかできない、普通は。

観賞者は引き込まれながらも掴めそうで掴めない熊谷聖司の実態を、両の目で見ているにもかかわらず暗中模索するのだ。その実、熊谷さん自身も同様にまだ見ぬ実態を探っているのではないか。探り続ける行為そのものが、熊谷さんの真骨頂なのだとすれば、目の前の写真がさらに魅力を増していく。見れば見るほどに、すごさを実感してしまうのだ。

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