志賀理江子「ブラインドデート」@丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

滞在時間はわずか3.5時間で、移動時間は7時間。移動の方が倍になっちゃうパターンの日帰り弾丸トラベラーで観覧してきた。

入って直ぐ、暗闇に点滅する光源に目が眩む。特に順路はない。はて、どう観てよいやら掴み所がない。でも次第に目が慣れ、場に馴染んでくる。歩きながら目にとまるスライドや写真を気ままに観られるようになる。周りの人も各々のスタイルで観賞している。中央で距離をとってぐるりと見渡す人。木製スツールをプロジェクターの脇に置き間近で食い入るように見る人。ふらふらと散策するようにあちらこちらを眺めている人。

21台ものスライドプロジェクターの作動音が有機的に響く。プロジェクターは改造されていて、投影のタイミングで点灯し、切り替わる時に消灯する。点いたり消えたりの無限ループ。それも機器ごとにテンポが違うようだ。綿密に練られた無秩序的秩序。まるで展示室がひとつの生き物のようで、しかも自分がその生き物の胎内に居るような感覚。妙に落ち着き、妙に騒つく。

そして展示室を抜けた通路の壁のテキストが出色。通路幅は一間ないくらい。柱が出っ張ってる箇所はもっと狭い。反対の壁にもたれながら距離をとって読む格好になる。先に三、四人も壁にもたれながら対面の文字を目で追っていた。それに倣う。ゆっくりと順にカニ歩きしてずれながら読み進める。少し考える。また読む。考える。また読む。考える。その繰り返し。志賀さんの言葉に理屈を超えた説得力がある。「弔い」や「歌」という言葉も、確信を持って発しているからこそ、読み手に訴える。この引力は凄まじい。

志賀さんがもがいてあがいてたどり着いた今回の個展。常に実験的で挑戦的な志賀さんならではの圧巻の展示空間だった。夏休みの宿題をギリギリに片付けたような駆け足の丸亀行きだったけど、観賞できて本当によかった。これを観て繰り返し考えたり、時間を忘れて語らえば、どれほどの学びがあるのだろう。志賀さんにどっさり宿題を出されたようだった。