昨年末から楽しみにしていた企画展。期待に違わぬ質と量で見応え十分だった。
「現代版画センター」は1974年の創立から1985年に倒産するまで、版画芸術の普及とコレクター育成という明確な構想で活動していた。版画作品の「版元」として奔走し振興に努めたという。10年余りという活動期間を短いと取るか長いと取るかは人それぞれかもしれないが、国内における現代版画の黎明期を支えていたことは間違いない。今その活動は画廊「ときの忘れもの」に引き継がれている。
版画というメディアに興味を持ってから、写真界の周辺で版画が見え隠れするようになった。興味を持てばアンテナが張られて、今まで目に留まらなかったものが目に入るようになり、自ずと情報が集まってくるのは道理ではある。でもこれほどの巡り合せは、版画との不思議な縁を感じてしまう。まあ、勝手にだけどね。
版画初心者にとっては、ほぼ未知の作家ばかり。知っているなという名前は、アンディ・ウォーホル、安藤忠雄、磯崎新、一原有徳、瑛九、草間彌生、駒井哲郎、関根伸夫、舟越保武くらい。それもまともに作品を見たことがないものが多くて、どれもこれも新鮮。それに一点一点がユニークな主題で飽きることがなく、大満足の企画展だった。気づけば1時間半ほどかけて鑑賞していた。
木版、銅版画、シルクスクリーンなど技法による描写の違いや、コットンペーパー、和紙、布地、金属などの支持体の違いも楽しめる。版画は写真よりも支持体のテクスチャーを楽しむメディアかもしれない。ミクロな視点も版画の醍醐味と言える。写真も版画も「プリント」という括りでは共通点が多く、写真好きも意外なほど楽しめると思う。
また図録がかっこよくて即買いした。タトウ箱入りの分冊という凝った作りだ。それと『版画、「あいだ」の美術』という本もゲット。これも楽しみだ。
一部展示の入れ替えがあり、トークイベントがあるようなので、時間を作って後期も足を運びたい。
コメントを投稿するにはログインしてください。