野村恵子 展|OKINAWA @POETIC SCAPE

楽しみにしていた野村恵子さんの個展を見てきた。同ギャラリーでは5年ぶりだそうで、そんなに間が空いていたんだと改めて思う。前回の展示は思い出深く、思い入れも強い。というのも、コレクションしているプリントの中でも最初期の1枚が、前回の『野村恵子 展【Soul Blue -蒼の彼方へ-】(2013年)』のプリントだからだ。私のルーツの一つである五島列島の写真で、初見でとても気になり、2度目に訪れた際に意を決して購入した。とても大切なプリントとなっている。

今回の個展は、ポルトガルの出版社『Pierre von Kleist editions』から昨年に出版された写真集「OKINAWA」から、新作を加えて展示をしている。2014年の銀座ニコンサロンの『赤い水』で見たイメージもあった。やはりこの濃密で濃厚な写真はクセになる。野村さんの写真には、自分の中にはない「濃さ」があり「強さ」がある。だからこそ無性に気になり魅せられてしまう。

どれをとっても野村恵子さんらしい濃さと強さを持った写真ばかりなのだが、その中でも「水面に浮かぶ女性」「焼かれる山羊」「腕にタトゥを刻んだ女性」「屋上の洗濯物」が気になった。特に「屋上の洗濯物」は銀座ニコンサロンでも見ていて、強烈に印象に残っている。たしか野村さん本人に、「どれか気になるのある?」みたいことを聞かれて、真っ先に選んだのがこの写真だった。またこれが壁にかかっていてとてもうれしかった。

それに加えて、今回は天野太郎さんとのクロストークがあり、とても楽しみにしていた。つい先日まで横浜市民ギャラリーあざみ野で開催されていた写真展『金川晋吾「長い間」』のキュレーションを手掛けられ、見事な展示構成を目の当たりにしていたこともあり、お名前は聞き及んでいたが、実際にはどんな方なのだろうと興味津々だったのだ。

さてそのトークはもう抱腹絶倒、爆笑必至の無双トークだった。詳細はいろんな意味で割愛せざるを得ないが、あえて一言で表現するならば「愛ある叱咤激励」とでもいうべき内容だった。天野さんも野村さんも関西弁全開でもはや漫談。天野さんの確かな経験と知識に裏打ちされたお話は、核心を突きまくり頷くことしきり。いつまででも聴いていられる面白さで、「ああ、写真と出会っててよかった」と思えるひと時だった。

野村さんが母方のルーツである沖縄を撮って20年。特有の時代背景を引き受けつつも、あくまで私的な目線で沖縄を追い続け、粘り強く、力強く、濃密にとらえ続けている。他のどの沖縄写真とも違う、野村恵子さんならではの沖縄写真は着実に強度を高めている。また長野のシリーズが継続中で、期待は膨らみ楽しみは尽きない。

なんにせよ、この人なら何があっても写真は続けるだろうと確信を持てる写真家の一人だ。だからこそ、写真家の野村恵子のコレクター、その末席にいられるだけでも、とても誇らしい気持ちにさせてくれるのだ。