吉祥寺のOUTBOUNDで福井守さんの木工作品を見に行ってきた。間伐材や流木などの素材を活かしながら、作家の頭の中にある心地の良い形を削り出している。手つかずの素材をあるがままというよりも、自然界に存在する数学的な美しさをという感じだ。
一点ずつ手に取りながら見ていくと、艶やかに黒光りした作品のひとつに目がとまる。アサガオの種を両手一杯くらい膨らませたような楕円体をしていた。上部に稜線のような一筋のエッジが伸びていて、底には3、4本の亀裂が走っている。
片手で持つには不安だったので、そっと両手ですくい上げてみる。予想よりもずしりと重く、磨かれた曲面が手に心地よい。角度を変えるとまるで違う表情になる。自分の気持ちの良い角度を探してみたくなる。
キャプションには「樫/篠山にて間伐される/鉄染め」とあった。樫の間伐材か。「鉄染め」って何だろう? スタッフの方に話を伺うと、サビ釘などを酢に浸して作った酸化鉄溶液を材に塗布し、タンニンと反応させて木肌を黒く変色させる技法なのだとか。草木染めにも使われていて、あのお歯黒と同じメカニズムらしい。
そこに在るだけで、その場が居心地よくなる木工オブジェ。このお店でまた素晴らしい作家に出会うことができた。
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