橋本とし子写真集『キチムは夜に飛ぶ』刊行記念写真展 @ふげん社

ふげん社の刊行記念展に最終日の終了間際に駆け込む。

タイトルの「キチムは夜に飛ぶ」がまず気になる。娘さんの突然発した言葉から直感的に付けたタイトルだそうだ。ユニークだけれど、これがしっくりとくる。

一見、時代性があやふやで、現代を撮っているとわかっていても、大正や昭和初期の情緒を感じさせる。ぎゅっと圧縮された異空間に足を踏み入れてしまったような写真たち。どこか乱歩的で怪奇な雰囲気が漂っている。それでいて愉快。居心地の良さと悪さが同居してる。

さらに写真集の表紙が面白い。藤色の地に黒艶の箔押し文字。左上にクロッシェ帽を被る少女。踏み込んだデザインだけれど、写真の良さを引き出しているように思う。これだけ攻めていて成立させるなんて本当にすごい。Book Photo PRESSの長尾敦子さんのデザイン。

高コントラストや粒状感はご主人の影響が少なからずあるとは思うけれど、この怪しい独特な世界観と相性が良いようだ。キチム(吉夢)の不可思議な世界は大人心も子供心もくすぐってくれ、とわくわくする夢物語のようだった。