いよいよ「EACH LITTLE THING」の#9、#10が刊行された。10巻揃えたら三方背の特製ケースがもらえる。コツコツ集めてきた人にとってはうれしい特典だ。「EACH…」の10巻と頒布小冊子「VERY LITTLE THING」を合わせた全巻が、ピシッと箱に収まる姿にほくそ笑んでしまう。
今回の展示も素晴らしい。印画紙は反射率の高いクリスタルペーパーを使っていて、これが熊谷さんの写真と相性抜群だった。印画紙のほのかにメタリックな光沢感がハイライトを活かし、ピントがシャープなのにどこか柔らかい印象を受ける。フラットな展示構成と相まって、気持ちの良い空間になっていた。写真集とはまるで違うテクスチャなので、見比べてみるのもおもしろい。
「縦位置でカラーのみ、セレクトと編集にあまり干渉しない」を続けることで、熊谷さんはすべてを等価で見たいという感覚が生まれたそうだ。イメージの縦横や大小、比率の違いなどの要素を省き、セレクトも編集も(信頼できる)他者に委ねる。できるだけ要素を少なくすることで見えてくるものとは。今回で「EACH…」は一区切りとなったけれど、フラットにものを見てみるという試みは、また違った形で続きそうだ。
それと「book obscura」で同時開催の『熊谷聖司のマルクマ本店 -写真家はどう写真集をつくるのか』 も良かった。熊谷さんがどんな写真家や文筆家に影響を受けて、何を踏んできたかが垣間見える。自筆の文章やイラスト、写真などが壁面いっぱいに貼られ、意識と無意識を混在させるようにヒントが散りばめられている。写真集づくりのプロセスも辿れ、さらに深く読み解くきっかけになるイベントだった。
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