津田洋甫展 – 初期作品 1950 – 60年代 @MEM

久しぶりにMEM。戦後の浪華写真倶楽部の復興に尽力したという津田洋甫の写真を初めて見ることができた。ほとんど世に紹介されていなかった50年代から60年代のヴィンテージプリント。日本の新興写真、主観主義写真として位置付けられる作風で、一枚一枚が力強く、実験的な写真ばかりだった。とにかくすっごくかっこよかった。

ギャラリーで少し話しを伺ったら、浪華写真倶楽部は1904年(明治37年)に結成し、現在もメンバーを変えながら活動が続いている国内最古のアマチュア写真クラブだとか。活動期間は結成から現在までで優に100年を超える。ピクトリアリスムからストレートフォトグラフィ、シュルレアリスムなどの文脈に影響を受けながらも日本独自の新興写真を追求した中心的なグループだった。

1904年は日露戦争が始まった年。ブレッソンが生まれる4年前、スティーグリッツが「ギャラリー291」を立ちあげる1年前。安井仲治はまだ1歳で、植田正治や桑原甲子雄が生まれるのはこの10年後。そう考えるだけでも、浪華写真倶楽部の歴史を実感できる。

関西のアマチュア写真クラブは独自の発展を遂げていて、長い歴史もあり、会員は高い矜恃を持って活動している。関東のアマチュアクラブとは文化も気質も違うところが多いので、そうと知らずに関西の写真クラブを迂闊に語ると痛い目にあうと聞いたことがある。何事にも敬意を持つことが大切だ。

津田洋甫は66年以降は作風を大きく変え、日本の自然をテーマに撮影をしており、今回の初期作品は戦後の新興写真の流れを色濃く残す貴重なプリントだと思う。MEMは埋もれてしまった作家や作品を掘り起こして、再評価をしてゆく取り組みも魅力で、未見の作家と出会える絶好の空間になっている。