
日本橋髙島屋で志鎌猛さんのプラチナパラジウムプリントを拝見した。日本では中長小西以来5年ぶりの個展だ。そうか、あれからもうそんなに経つのか。
腰を据えて、撮るべき時をじっくりと待ってから撮影された「森の襞」や「観照」に代表される大判の作品と、都市部や植物をとらえた中判作品で構成されていた。低コントラストの穏やかなイメージの中の無限階調は、まさに「諧調」豊かなプリントだった。眼福の極みだ。
5年前、中長小西で初めて志鎌さんのプリントを見る機会を得た。その頃プラチナパラジウムプリントの美しさに触れ始めていて、志鎌さんがとらえた幽玄の世界に魅了され、意を決して作品を購入した。支払いは一年ほどかけて分割でお願いした。一括で払うには高めの価格だったこともあったが、コツコツ払うのも良いのではと思ったのだ。
ギャラリーによっては作品の先渡しができるも所もなくはないが、基本的には全額を支払い終わってからの納品となる。少しずつ無理のない範囲で支払うこと一年後、ようやく完納して作品を受け取ることができた。改めてプリントを見ると、初見の感動が呼び覚まされて、とても感慨深かった。
今回、5年ぶりに拝見したプラチナパラジウムプリントは、どこまでも繊細で優しさに満ちた作品で、志鎌さんの穏やかで真摯な人柄と相まって、とても豊かなひとときだった。
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