ロバート・フランク展 – もう一度、写真の話をしないか。 @清里フォトアートミュージアム

たまに、宿泊ほどではないけど、遠出したくなる時がある。そんな折に、清里フォトアートミュージアム(以下K*MoPA)に行ってみることにした。お目当てはもちろん、ロバート・フランク。未発表を含む収蔵品106点の展示を見逃す手はない。特急あずさに乗り込みいざ清里へ!

ロバート・フランクのヴィンテージ・プリントは高騰の一途を辿っている。ワシントンのナショナルギャラリーや世界中のコレクターからの貸出しには高額な保険金が発生するため、展覧会を開催する機会がめっきり減っているという。藝大でも開催されたシュタイデル主催の巡回展『ロバート・フランク:ブックス アンド フィルムス, 1947-2016 東京』は、高額なヴィンテージ・プリントに対するアンチテーゼとして話題になった。

そんな事情が絡んでいなくとも、日本でロバート・フランクのプリント100点余りをまとめて観賞する機会はまずないだろう。K*MoPAとしても収蔵品をまとめて展示するのは初の試みとのこと。国内では23年ぶりの大規模展らしい。おそらく横浜美術館で開催された「ムーヴィング・アウト」という展覧会のことだろう。この頃はロバート・フランクはおろか、写真のこともろくに知らない頃なので、全く知る由もなかった。なおのこと今回の展覧会は有難い。

展示に際して、事前にアメリカまで全所蔵プリントを持ち込みロバート・フランクに1点ずつ確認してもらったそうだ。展示のセレクトも本人の意向が強く反映されているようで、未発表作品が数多く含まれているのもその影響と思われる。現場でロバート・フランクが記録や記憶を頼りに、プリント一枚ごとに何を語ったのだろうと思うとわくわくしてくる。

さて、小淵沢駅から小海線に乗り換え清里駅に向かう。清里駅からタクシーで10分ほどでK*MoPAに到着した。自宅から3時間余り。標高1200mを超えているのでたまに耳抜きが必要になる。

館内は平日とあってか閑散としていたお陰で(私を含めて2人だけ)、ゆっくり一点一点見ることができた。有名な「The Americans」に収録されているプリントは9点に止まるが、そんなことはあまり大したことではなかった。アメリカを中心に、ペルー、パリ、イギリス、スペイン、イタリア、故郷のスイスと、ロバート・フランクが旅した数々の軌跡を、未発表を含めた貴重なプリント通して感じ取れること自体がうれしかった。

撮影年の記憶違いについてもキャプションで触れていて、裏を取って正確な情報で補足しつつ、ロバート・フランクが認識している年のまま記載していた。おそらくすべてのプリントについて、改めて裏取りし直したのではないだろうか。一部撮影年不明のプリントがあったものの、地道な作業の積み重ねにグッとくる。

一番のお気に入りは、出口も近づこうかという最終盤のプリントで、車のフロントウインドウ越しに撮られたものだ。砂埃なのか雨なのか手ブレのせいなのかわからないが、滲んだ窓越しにぼんやりと写る道路標識が堪らなくかっこいい1枚だった。

ロバート・フランクの今の感覚が反映された展示なのは間違いない。開催期間は9月23日まで。次は何年後になるかわからない。早めに観ておいて損はないと思う。