楽しみにしていた泉さんの写真展は最終日になんとか滑り込めた。今年は週末の予定が立て込んでいて余裕がなく、どうしてもピンポイントな日程になってしまう。それでもなんとか見にいけて、ひとまずホッとしている。
今回はいつもの月光荘ではなく、Monochrome Gallery Rainというコマーシャル・ギャラリーでの開催だった。古典技法を含むモノクローム専門のギャラリーで、ご夫婦で経営されている。
たまたま銀座まで出かけていたオーナー夫妻が、月光荘の泉さんの個展を覗いたことから始まったようで、それから何度か個展を開くたびに見にきていただけるようになったそうだ。不思議なご縁が繋がり、コマーシャルギャラリーで個展を開くことになった。
今回は新作の発表というわけではなく、過去作を含めたオーナーのセレクトによるもの。月光荘では自主開催だったから、もちろん泉さん自身でプリントを選んでいた。およそ年一回のペースで個展を開いていたし、自ずと新作を出すことが多かった。他人の手によって選ばれたものは、撮影者の意識の外になるわけで、泉さんからしたら意外なプリントが選ばれたなんてこともあったはずだ。
泉さんと話をしていて興味深かったのが、「球体」の例えだった。撮影する時に、対象は球体の中心にあって、球体の外側から一定の距離で対象を見ているイメージなのだそうだ。よく同心円状という二次元的な表現はあるけれど、それが立体的な球体のイメージというのが面白い。いつも言語の一歩手前のような不思議な感覚の話を聞けるので、泉さんと話すのはとても楽しい。これこそ写真の世界。
そう、泉さんにはいつか写真集を出してもらいたいなと思っている。銀塩プリントのクオリティを再現するとかではなくて、泉さんらしい解釈で編まれた、印刷物でしか味わえない写真集を見てみたい。スデクやケルテスやアジェの古本と並んでも、なんら違和感を感じさせない、時代に消費されない、世代が何周しても楽しめる王道の写真集。たのしみだなあ。まあ、外野が勝手に妄想しても始まらないので、果報は寝て待つとしよう。