西野壮平 水のかたち @rin art association(高崎市)

国内では4年ぶりとなる西野壮平さんの個展「水のかたち」を見に行ってきた。最近は海外での活動が多くて、なかなか見る機会がなかったのでうれしい。初めての高崎。かつて住んでいた茨城を思わせる北関東の空気が懐かしい。

今回は、2017年に1ヶ月間イタリアのポー川沿いを歩いた「lL Po」シリーズを中心に200点もの作品が展示されていた。

なんと言っても、目玉はDMにもなっているあの8枚組のポー川のコラージュ。ポー川の源流から河口までを、1ヶ月かけてフィールドワークして撮りためた記録が、8枚のプリントに凝縮され、圧倒的な情報量を持って再構築されていた。

この巨大なべた焼きのコラージュ作品は、いわゆる多視点要素と、衛星写真のズームイン・ズームアウトのような要素がある。ポー川全体のマクロ視点と、ひとコマもしくは複数コマのミクロ視点が一度に体験できる。マクロからミクロ、ミクロからマクロを繰り返して無限ループになる。

川周辺の生態系や産業、さまざまな人の営みが見てとれ、細部を見ては引いて見て、引いて見ては細部を見てと、見ても見ても見足りない。このプリントを前にして、誰かとテーブルを囲めたら、何時間でもしゃべっていられそうだった。

コラージュだけでなく、ストレートフォトも数多く展示されていた。ポー川の巨大コラージュから還元されたようなプリントで、さらなるミクロ視点を楽しめる。額装されていない大小さまざまなプリントが、平面の天地左右を巧みに使って空間全体で物語が形成されている。

見ていて思い出したのが、小学校の時の社会科見学。グループを組んで、町歩きをしながら、商店街や工場なんかで話を聴いて、絵や写真を切り貼りして地図を作るってのがあった。その感覚に近いなって思った。

西野さんの写真は、コラージュという加工手段を使いながらも、写真が写真である魅力に溢れている。高崎まで行ってよかった。