七海愛 写真展 「yellow」@book obscura

沖縄で活動されている七海愛さんは、東松照明ワークショップの最後の教え子のひとりで、しかも東松さんの奥様、泰子さんにレタッチとプリント技術を学んでいる。

作品はいわゆるストレートフォトではない。撮った写真はあくまで素材で、画作りはそのあと。多重露光したり、レイヤーを重ねたりして調子を整える。もはや創作と言っても良い。しかも、そのレタッチ内容は想像を遥かに超えるもので、レイヤーの数は腰を抜かすレベルだった。

七海さんは「しっくり」という言葉をよく使う。自分がしっくりくるまで、レタッチ作業を重ねる。何度も何度も、何層も何層も。根気よく作業して、しっくりきたら手を止める。写真的なストレートフォトではないかもしれないけど、七海さんの主観にとても素直で真っ直ぐな写真なのだと思う。

「自分は写真が下手なので」と七海さんは言う。何度も写真を辞めようと思ったそうだ。でも、東松照明さんに「面白い」と言ってもらえる写真があって、周りから酷評されても続けることができたと言っていた。続けたことでたどり着いた写真は、とてもユニークで特別な写真になっている。上手くとれないという弱味が、実は唯一無二の強味になったのではないだろうか。

『yellow』── 父親の死をきっかけに生まれた写真集 ── は、七海さんの「しっくり」が詰まった紛れもなく七海さんにしか作れない写真なのだ。