自宅以外でコレクションを飾る

2年前くらいから自宅以外のある場所で写真作品のコレクションを飾らせてもらっている。公的な場所じゃないので、詳しくは言えないけど、信頼が置けて気心もしれていて、個人宅ではないスペースとだけ。もちろん双方同意のもとで、貸与でも贈与でもなく、個人蔵の作品をただ場所を借りて飾らせてもらっている。ニュアンス的には、無償で飾る壁面を貸してもらっているという感じかもしれない。

先日、久しぶりに作品の掛け替えと掛け増しをしてきた。その場所に合うように考えて選ぶのは楽しくて、ちょっとしたキュレーション気分を味わえる。今回はこっそり自分の写真も混ぜてみた。作品についてあえて説明せず、もし興味を持ってくれて何か聞かれたら答えるようにしてる。

写真や版画などを購入するようになってしばらくして、やはり作品を家で飾りたいと思うようになった。賃貸だからと諦めずに工夫しながら壁面を確保して、ささやかな家庭内ギャラリーを楽しんでいる。限られたスペースなので、季節や気分で掛け替えるものの、すべての作品を満遍なくとはいかない。額装済みで飾りきれないもの、マットに入れただけのもの、シートのままのものもある。それはそれで観賞の仕方があるけど、壁に飾っているのに比べたら、見る機会はそう多くない。

ある時から自宅以外でも飾れたらいいかもと考えるようになった。どこでもいいわけではない。安心して預けられるところがいい。勤務先はどうだろう? いや、公私混同は否めないし、何かあっても会社側も責任を負えないだろう。友人宅はどうか? あり得るけど、ちょっと気を使わせてしまうかもしれない。友人とはいえ他人様の私物を預かってる感じが強まってしまっても申し訳ない。

たまにそんなことを考えつつも、特に具体的に動くわけでもなく、軽い妄想を膨らませているだけだった。それから何年か経って、ひょんなことから進展があった。昔からお世話になってる方の事務所が移転することになり、移転先に顔を出すことがあった。室内はとてもきれいにされていたが、やや簡素な印象で、ここに写真とか飾ったらいいだろうなと勝手に思っていた。雑談の中で「女性のトイレが殺風景でね、何か飾れたらって思ってるんだけど、何を飾ったらいいか分からなくて」という話になり、思わず「もしよかったら私の持っている写真を飾らせてもらえませんか?」と提案してしまった。

先方も好意的に受け取ってもらえて、手始めにサイアノタイプの小作品を選んで飾らせてもらった。当初は女性用トイレに飾る予定だったが、入口からすぐ見える場所がいいだろうとうことになり、入ってすぐの柱に掛けさせてもらった。たった一枚写真があるだけで、場の雰囲気ががらりと変わる。これは自宅でも実感していることだ。どんなに殺風景でも、どんなに生活感にあふれていても、一枚の写真が空気感を変えることがあるのだ。

で、今回ようやく女性用トイレにも一枚飾らせてもらった。こちらは六切サイズくらいのプラチナパラジウムプリントにした。主張しすぎず穏やかな雰囲気になるようにと選んだ。他にも自分の写真を含めて掛け増しをした。事務所内の動線を意識しながら、サイズ感も考えて配置してみた。事務所の方にもご満足いただけて、ひとまずミッションコンプリート。次回はカラープリントや版画作品なんかも良いだろう。頃合いを見計らって内容的に歯ごたえのある作品も試してみたい。もし作品に興味を持ってもらえて、作品の世界観をより楽しんでもらえたら嬉しいな。自分の家だけにとどまらないコレクションのあり方をいろいろ考えるきっかけになっている。