泉さんの写真展におじゃまする。静謐で端正なプリントが素晴らしかった。やはりプリントが上手い。前回のニコンの徹底した物撮りより、もう少し距離感のあるイメージにシフトしていた。その距離、数歩後ろといったところ。それでも大きく世界観は変わる。スナップではない、と思う。窓ガラス、ワイングラス、カーテン越しなど窓際の絶妙な光を捉えたモノクロらしいイメージだ。
ただ単に美しいプリントというわけではなくて、タイトルにある通り、見えているものの底流にある何かを捉えたいと考えているようだった。よくよく見ると、それを意識するようなセレクトになっているのがわかる。先に挙げた窓ガラス、ワイングラス、カーテンも、写り込みによる像の重なり、多重のイメージはその意識の表れだと思えた。
おそらくこれからもっと深く探っていくシリーズなのだろう。写真の見えない底流に触れていく作業には興味が惹かれる。美しいプリントの中に、チリチリとノイズのような引っかかりのある作品だった。美しさと引っかかり。これを両立させるのは難しい作業かもしれないけれど。
銀座月光荘の画室3。かなり良い場所にあるギャラリーだった。