それは写真集の見開きで類似イメージの二枚組のこと。今までそれほど気にも留めてなかったけど、ここ2、3年で買った写真集に、一冊の中で多用している作家が多かったので、少しずつ気になりだした。全編にわたって類似のイメージを収集したタイプの写真集ではなくて、いろいろと異なるイメージの中に、ふと同じようなイメージの二枚組のページが現れるタイプのものだ。二つ並びのイメージはまるっきり同じという例ははあまりなくて、「少し違う」とか「ほとんど同じ」とか、そういう印象を持つ二枚組が多い。同じロケーションで時間軸をずらしたり、違う角度で撮ってみたり、または場所を変えて似た構図を揃えたりと、バリエーションはいろいろある。
(ん? 同じ?)
(いや、違うか…)
(どう違う?)
(どこが同じ?)
(似てるな…)
(なんで?)
思考とともに目が往復し、見開きページの滞空時間が長くなる。左から右への目線のリズムに変化が生まれる。視覚のリフレイン効果が生まれるからか、とても印象に残りやすい。
そういう仕掛けの中に、この見開きに類似のイメージを並べる方法もあるのだろう。坦々と見せるタイプの写真なら逆効果かもしれないけど、予定調和を崩したい場合は面白いかもしれない。坦々とした写真でも、全編わたる構成なら有効かもしれない。
そういえば、あるキュレーターの方に壁面の展示での二枚組は難しいと言っていたような。見る方がどちらかのイメージに引っ張られて、片方の印象が薄くなるんだとか。単なる好みで見られてしまいやすいというのもあるのだろう。二枚組の難しさを解決する一つの方法が類似イメージかなと思った。二枚を偏りなく見てくれそうだし、ある意味、一枚画として見ることもできる。
それで思い出したけど、渡部敏哉さんの“Thereafter”というシリーズがあって、それは震災後の故郷・浪江町を数回にわたって記録した作品だ。定点観測的に何箇所かを撮影し、時間の異なる同じ場所を二枚組にしている。ゆっくりとだが、確実に変化していく様を二枚組で見事に表していた。震災の写真をどう扱うかというデリケートな議論はあると思うけど、その議論を超えたところに渡部さんの写真が存在していると思う。
まあ、私は編集の専門家ではないので、全くの的外れかもしれないけれど、写真好きな素人のつぶやきと読み流してもらえたら幸いです。
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