熊谷聖司展「EACH LITTLE THING」@POETIC-SCAPE

ポエティックスケープの熊谷聖司展「EACH LITTLE THING」。同タイトルの写真集を10冊まで出版するプロジェクトで、今回で7と8が上梓された。

デザイナーの高橋健介さんに編集を一任して、熊谷さんはあまり干渉しないというスタイルをとっている。3.11以降「わたしの欲望とは何か」というテーマのもと自問自答する試み。

もちろん誰が編集しようとも熊谷さん自身が反応して撮影したものには変わりはない。でも編集の及ぼす影響は大きい。特に写真は編集いかんによっては、見え方はがらりと変わる。撮影者と編集者との信頼関係があればこそだろう。

まあ、そんなプロジェクトの前提を知らなくても、熊谷さんの写真が魅惑的なのは間違いない。おもねらず、突き放さず。ツンでもデレでもない。写真の塩梅が際立っている。写真の旨味たっぷり。これ、やりたくてもなかなかできない。見れば見るほどに、熊谷さんのすごさを実感してしまう。

藤崎均さんの「歪んだ箱」@OUTBOUND 吉祥寺


吉祥寺のOUTBOUNDで木工作家・藤崎均さんの「歪んだ箱」を一目惚れで購入した。この箱、クラロウォルナット材という銘木をくりぬいて製作されている。米国産に欧州産を接ぎ木したブラックウォルナットの亜種で、瘤杢(こぶもく)なる歪な模様が特徴らしい。確かに波打っているような、震えているような有機的な杢が見てとれる。その杢に同調するように、箱の外形も絶妙に歪んでいる。のせ蓋がはまった時の塊感、安定と不安定のバランスが素晴らしい。店主・小林和人さんは物の役割に「見た時に認識できる具体的な『機能』と、目に見えない抽象的な『作用』」があると常々言っているが、藤崎さんの箱はまさに「作用」の逸品だ。矯めつ眇めつしているうちに、しばし暑さを忘れるとか忘れないとか。

田中大輔展「火焔の脈」@ガーディアン・ガーデン

田中くんの内面の狂気は計り知れない。そう思うようになったのはいつからだろう。時を経るごとに、展示を重ねるごとに、田中大輔の根幹の部分が少しずつ炙り出され、研ぎ澄まされてきている。適正とは言い難かった写真も、量を積み重ねるうちに、成立させてしまう説得力を手に入れつつある。というより、写真の質を凌駕するほどの強度と狂気を獲得しつつある。

彼の狂気はこれまで溜め込んで行き場のなかった熱意であり、写真へと導いた初期衝動だ。田中大輔の写真はとにかく刺さる。ズブッとひとつ突きではなく、ゆっくり鳩尾に刃先が入ってくる感覚だ。

未完成感を残したまま強度を増してゆく様は、さながらダーマ神殿に一度も行かずにレベル99を目指すドラクエの主人公だ。不器用極まりないが、転職しない写真家の狂気に癒された日だった。