ずっと待ち望んでいた星野さんの初個展に伺った。湿版写真に取り組み始めてからというもの、親子ほど年の離れた後輩である私が、顔を合わせるたびに「星野さん、そろそろ個展やりましょう!」とけしかけていた。半分本気で半分挨拶がわり。いや、日が経つにつれて8:2で本気になっていた。それくらい星野さんの湿版の石仏は圧倒的で、個展という形で早く見てみたいと熱望していた。それが貸ギャラリーではなく、コマーシャルの冬青で個展が決まったと知ったときは本当にうれしかった。私がけしかけたことなどまったく関係なく、星野さんの湿板を冬青の高橋社長が見初めたからに他ならない。
同期として参加させていただいたWSの卒展やOB展、はたまた歴戦の兵から意欲溢れる若手までがごった煮で集う「東京8×10」などで折にふれて石仏の写真は拝見してきた。とりわけ湿板写真になってからというもの、石仏の存在感がより一層際立つようになっていた。被写体と技法が見事に一致していると思えた。
湿版写真の魅力は滑らかな諧調と独特の立体感で、肉眼で捉える以上のリアリティが立ち現れる。湿板はかなりの労力と根気と財力が必要な技法でもあるので、実際に技術を学び習得しながら作品にまで昇華させるには途方もない時間と費用がかかったはずだ。意欲と熱意に溢れる姿は本当にすごい。奥様と共に本当に尊敬している。
久しぶりに訪れた冬青の室内で、一点ずつ時間をかけて観賞させていただいた。その中で何度も何度も観てしまう一枚があった。どこか仏様が手を合わせているようにも見える水芭蕉だった。エディションが進む前にと思い意を決して購入を決めた。
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