額装も愉しみのひとつ

写真の楽しみのひとつに額装がある。写真はシートやブックマットのままで観賞するのも好きだし、ピンナップも気軽でいいけれど、気に入ったプリントはそれなりに額装したくなる。

写真を始めて最初に買ったのがニールセンのアルミフレームで、黒の16×20インチだった。さすが定番フレームだけあって、卒のない見栄えと、インストールのしやすさは折り紙付き。それに合わせてブックマットも少しずつ同じサイズに統一するようになった。保管もしやすいし、中身の入れ替えも簡単で、日常的な額装はこれで十分だと感じている。

でもたまに、手持ちのプリントを専門の額装コーディネーターに依頼することもある。プリントのイメージサイズから逆算して最適な額装をするので、自分で既製品を揃えただけとはひと味違った仕上がりが期待できる。

一から打ち合わせする場合は、こちらの希望を伝えつつ、プロの意見を踏まえて方向性を決めていく。まずは写真のイメージから。カラーかモノクロか。何が写っているか。イメージサイズは? ペーパーの地の色は?と基本データを揃える。それからブックマットの紙質と色は何が合うか、額サイズ、見え幅、高さ、材質、色は何がいいかをマッチングさせてゆく。

インチ規格にはあまりこだわらず、そのプリントに相応しいサイズや材質が何かを丁寧に詰めていけば、自ずと完成形が見えてくる。餅は餅屋というけれど、額装にもそれが言える。それに一度でもプロに頼むなり、相談すると本当に勉強になる。

写真の楽しみ方は色々あっていいし、必ずしも額装はこうあるべきということもないと思う。それでも、写真額装の基本的なことを知っておくと、幅が広がって楽しみが増すのは確かだ。

とそんなことを言っておきながら何なのだけど、今、個人的に旬なのがIKEAのフォトフレーム。インチじゃなくてセンチ規格ながら、驚きの価格は目をみはる。特にSTRÖMBYシリーズはクセがなくて使いやすい。アルミ製のオーソドックスな作りで、フロントパネルもガラスが付属している。棹の剛性や細かな作りに目をつぶれば、サイズも豊富だし、ぱっと見はニールセンと比べても遜色ない。今更感もあるかもしれないが、IKEAのフレームのコスパはすごい。グループ展用にでも10や20くらい持っていても悪くないかもしれない。まあ、置く場所があればだけど。


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平間至さんの七ヶ浜

昼食をとろうと行きつけの洋食屋に入ると、先客に平間至さんがいらした。アシスタントさんであろう人と一緒で、すでに食べ終わって、二人で会話をしていた。3年ほど前に、PIPPOのモノクロワークショップを受講したこともあって、実は面識はあった。挨拶しようかと思ったけど、ふと目が合った瞬間の感じでは、おそらく覚えてないだろうと判断し、何食わぬ顔で(いや、これから昼飯は食うのだが)隣の席に着き、いつものランチを注文する。

聞き耳を立てていたわけではないけれど、何となく声は聞こえてくる。ぼそりぼそりと低く響く語り口はとても特徴があった。穏やかながらも芯の強い人柄がうかがえる。吉祥寺で村越としやくんとのトークショーを聞いた時も、マイクを通してですら音量は小さかったのに、不思議と耳の奥まで声が届いた。とても心地の良い声だ。

結局、会話を遮ってまで声を掛けるのも気が引け、何が起きるわけでもなく、何かを起こすわけでもなく、ランチを食べ終わるとそそくさと出て行った。

店を出た時にふと思い出したのが、2年ほど前の展示のことだった。芝浦のPGIで開催された「last movement –最終の身振りへ向けて」。田中泯さんの「場踊り」と近作の風景写真を織り交ぜたとても力強い展示だった。

その展示の中でもひときわ惹きつけられたのが、七ヶ浜の写真だった。嵐の日に荒れ狂う波。海岸から望む鋭利に削り取られた黒々した岩。その上を飛ぶ一羽のカモメ。奇跡的ともいえる一枚に打ちのめされた。他の写真も素晴らしく何往復したかわからなかったが、必ずこの七ヶ浜の写真に戻ってきた。

そうしたら、いつの間にかギャラリストの方を呼んで、七ヶ浜の一枚を指さし、「これを注文したいのですが」と言ってしまっていた。「2サイズありますが、この展示している大きいのと、小さいのがあります。小さい方ですか?」と訊かれた。おそらく気を使ってくれたのであろうが、迷わずに「あ、展示しているこのサイズで」とお願いした。

予算があったわけではない。その後はそこそこ生活がしんどかった。でも、後悔したことはなかった。しばらくは額装しても飾る場所が無かったので、ブックマットでたまに眺めるだけだったが、荒々しい風景なのに、見るたび心が落ち着いた。今、ようやく飾れる場所を作り、額装し壁に掛けている。

次に会う時は、ちゃんとご挨拶して、七ヶ浜の写真のことを言ってみたいと思った。