かぶせ箱を差し箱に作り変える

プリント購入時に額装もお願いすれば、「黄袋」+「差し箱」に入れて納品してもらえる。黄袋は防虫効果のあるウコン染めの生地で美術品の収納には欠かせない。ウコン染め風の生地を使っている場合もあるけど、無いよりは良いし、何より出し入れがしやすい。差し箱は一般的に段ボール製で、短辺のひとつを差し込み蓋にして文化鋲で留める箱だ。ギャラリーのバックヤードなら必ずといっていいほど存在する。額装品の収納には、黄袋と差し箱の組み合わせが最適。定番中の定番だ。


ところが既成額の外箱のほとんどは「かぶせ箱」。量産が効きコストも安いが、とても収納しづらい。縦置きにするとふたが開いてしまうし、平ゴムやパーマセルで留めてもすっきりしない。かといって平積みすると「ダルマ落とし」よろしく、取り出すのに苦労する。やはり額の収納は差し箱の縦置きが理想的だ。

そこで時間が取れた時に、かぶせ式の外箱を、差し箱に作り変えるようにしている。板段ボールで一から作るのと違って、かぶせ箱からの改造はわりと簡単だ。すでにその額のサイズになっているので、四辺中の短辺ひとつを残して、三方を塞げば出来上がりとなる。道具類は次のものがあるといいかも。

  • 水張りテープ(ミューズ製)
  • 文化鋲(タコ糸、ポリワッシャー付き)
  • ボーン・フォルダー

水張りテープと文化鋲は「まさにこれ!」って仕上がりになるのでぜひ用意したい。

特に水張りテープはマスト。他の粘着テープでも代替できるけど、水張りのほうが重ね貼りしやすく、仕上がりが断然きれいだ。文化鋲は金づちで潰して固定する鋲で、タコ糸とポリ製ワッシャー付きのものだ。他にはハトメ金具を使った封緘と呼ばれるタイプもあって、マチ付きの書類封筒に使われている。見た目は似ているけど、差し箱には文化鋲が向いている。

それと、あると便利なのがボーン・フォルダー。バーニッシング・ボーンなんて呼ぶこともあるヘラだ。製本道具として使われている。紙工作ではとても重宝するので、一本あると本当に便利。ちなみに「ボーン」って名がつくのは実際に牛骨製のものが主流だから。牛骨製は用途に合わせてヤスリで削って形状を変え、アマニ油に浸し自然乾燥させて硬くしてから使う。牛骨製の場合は必ずこの作業をしないと、骨の中は見た目以上にスカスカなので、すぐ折れてしまうし、けっこう生臭い。3年くらい前に作ったのが少しずつ飴色になってきていい味出してきてる。

文化鋲は水張りテープで三方を閉じる前に、裏から金づちで打ち込んでおくと良い。慣れが必要だけど、先端を垂直に打ち込めれば自然と四方に割れて潰れてくれる。


テープは、水に浸して軽く絞ったスポンジでのり面を濡らして貼り付けるだけ。ボーン・フォルダーで余分な水分を逃がしながら慣らせば、より仕上がりがきれいになる。

差し込み蓋は、かぶせ箱の上蓋の短辺をひとつ切り落とし、底蓋の短辺に繋げて作っている。中には、底蓋の側面を二つ折りにして強度を高めているものがある。それならば、折り込みを広げるだけで差し込み蓋になる。上蓋は切り落とすだけだ。

こういう外箱なんかにも気を配ると額装品の管理も楽になって、掛け換えなんかもスムーズになると思う。