【2/4】オリジナルプリントを買うなんて誰にも勧められない。

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最初の一枚を買った時にとても複雑な気持ちになった。オリジナルプリントを手にしたうれしさはあったが、胃の腑が落ち着かなくなった。部屋にどう飾ろうかと思いめぐらせたら心は踊ったけど、肩にずしりと重たいものがのしかかった。

やはり普段買っているのと明らかに違うものに対して、お金を払っているからだろう。しかも何万単位の値段がする。洗剤やトイレットペーパーなどの生活必需品ではない。キャベツや豆腐でもない。ソファでも冷蔵庫でもデジカメでもない。オリジナルプリントの実用度はきわめて低い。自分を納得させるのに一苦労したのを覚えている。

ところが最初の一枚を購入してから5年以上たった今では、数十枚のオリジナルプリントが手元にある。写真を始める前には考えられない事態だし、自分でもどうかしていると思う。しかも、一枚目と同じように、購入するたびに複雑な気持ちになるのは変わらなかった。ぐるぐると思考をめぐらせ、自分を納得させる材料を探した。

でも不思議と買うときは、どれにするかすぐに決まり、「これをください」と迷いなく注文した。ひとしきり複雑な感情が過ぎ去れば、どのプリントも買ったことを後悔することもなかった。

それもこれもオリジナルプリントは買ってからがはじまりだと思えたからだった。

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