【観賞後】Wolfgang Tillmans「Your Body is Yours」@国立国際美術館

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先々月、大阪・中之島の国立国際美術館にヴォルフガング・ティルマンス「Your Body is Yours」を観てきた。観賞後ふた月ほど経過して、少しだけ咀嚼できたので感想を書いておこうと思う。

美術館での個展開催は、国内では初台の東京オペラシティーアートギャラリー以来11年ぶり。しかも、25年のキャリアの中でも、自身にとって過去最大級の個展だという。観に行くことに意義がある、というわけで、初の大阪行きとなった。

まずは、とにかく本当に観に行けてよかった。

いや、ティルマンスのことを多く語れるほど詳しくないし、というか、ほとんど知らないに等しい。ターナー賞ハッセルブラッドアワードを受賞したとかは何となく聞き及んでいたものの、作品の製作意図や取り上げるテーマもよく分からず、とらえどころがない印象だった。

今回もせめてもの予習をと思って、WIREDのインタビュー記事を読んだり、YOU TUBEの動画を見たり、写真集を数冊紐解いたりしながら、予備知識を得た程度だ。まあ、ミーハーというか、写真に関わっていれば避けて通れないというか、とりあえず見ておきたかったというのが本音だ。

そんな自分が、これほどの満足感を得られるとは思ってもみなかった。おそらくそれは、写真もさることながら、展示空間に起因している。やはりティルマンスは展示なんだなと。こんな根本的なことを知るには、やはり展示を見ないことには始まらない。

国立国際美術館は地下に潜って行く構造で、ティルマンス展はB2階に位置した。広いフロアは、大きく14の展示に区切られていた。その内、吹き抜けのアトリウムには壁面にひとシリーズ、それから過去のありとあらゆる印刷物が展示されていた。

それらが緩やかな導線で繋がれ、自由に行きつ戻りつできる。各展示室は極めてシンプルでありながら、予定調和を感じさせないレイアウトになっていた。作品サイズと配置が絶妙で、居心地の良さこの上ない。

特に、ROOM5がお気に入り。壁面と併せて、床面にも長細い展示台がいくつも互い違いに並べられている構成で、立体的に展示を愉しめる。部屋の隅っこに立ち、対角で空間を見た時の遠近感は胸が躍った。ふと思い浮かんだのは龍安寺の石庭。その場にいるだけで気持ちが良い。

ティルマンスといえば、写真によるインスタレーション。人によってはもう耳にタコができているフレーズだろう。一見無造作に見えるピンナップの展示も、時間をかけて練りに練られたプランだと聞いたことはあったが、まさかこれほどまでとは思わなかった。

おそらくこの手法は、大きな箱であればあるほどその本領を発揮するのではないだろうか。昨年の六本木の展示ではあまり感じられなかった高揚感だった。

まだ、ティルマンスの写真そのものを言葉にできるほど理解できていない。でも、ティルマンスが写真を通してどう投げかけようとしているかは、少しばかり意識することができた。

巡回展の予定はないらしい。これだけスペースに最適化したコンテンツを、そのままホイっとは他へは移せないのだろう。それに美術館側もそう易々と手放したくないのかもしれない。そういう意味でも、何はともあれ中之島に駆け込んでよかった。