
吉祥寺のOUTBOUNDで、山梨県北杜市にアトリエを構えるHouse.のマスミツケンタロウさんの展覧会『House. Online Exhibition』を覗いてみた。といっても、COVID-19の影響を受けて店舗は休業中で、展覧会名の通りオンラインでの開催だった。
マスミツさんは、革や金属、石などを用いて実用品から造形物まで幅広い作品を作られている。今回初めて作品を拝見したが、画像だけでも十二分に作品の趣は伝わってきた。なおのこと実際に手に取ってみたくもあったがこればかりは仕方がない。
作品のサムネイルをつらつらと追っていく。革製品も気になるところだけど、特に惹かれたのが版画作品。石をモチーフにしていて、モノクロの楕円や多角形の石のイメージを刷った作品だった。画面で見ただけで、これは!と思い、躊躇なく注文してしまった。
注文から2日ほどで作品が届く。早速開梱して実物を見てみる。良い、想像以上に。まず、石のイメージが素晴らしい。そのザラザラとしたリアルな石肌は、風雨にさらされ、水流で削られた自然石と見紛うばかりの表情を湛えている。
次にエンボスの深さ。普通、版画は四角い版を使うことが多いと思うが、マスミツさんの版画は、版自体が刷りたい石の形そのものになっている。石型の版でプレスすることで石の輪郭にくっきりとしたエンボスが表れる。平面作品でありながら立体的な表情を楽しめる。
おそらく銅版画だ。でも今まで見てきた描写とは違って線描ではない。石肌の質感をどうやって出しているのかが気になった。OUTBOUNDのスタッフの方やマスミツさんに直接お話を伺えたら良かったが、そうもいかないので、メールで質問してみることにした。
早くも翌日に返信がくる。なんと、実際に銅版を石で叩いてつけたテクスチャーとのこと。リアルな石肌だと思ったけど、本当に石で叩いているとは驚いた。ドライポイントやメゾチントなどの直接技法の部類になると思うが、手で彫ったり削ったりするのと違い、意図しない無作為な模様を生み出せる。石をモチーフにした版画としては、大胆でありながらも理にかなった方法だ。
他にもマスミツさんの創作の姿勢や、石のシリーズへの思い入れなども知ることができた。スタッフの方にはとても丁寧にご回答いただけて感謝しかない。
もうこれは、ちゃんと額装をして飾りたくなってきた。達川清さんの「QUAU in Photo」のプリントと並べて飾ったら面白いかも。石というテーマや製作アプローチも通ずるものがある。久しぶりにプロに額装をお願いしてみようかな。

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