[写真集]鈴木敦子『Imitation Bijou』

たまたまサンエムカラーのブログで鈴木敦子さんの写真集『Imitation Bijou』を見てから、なんとなく気になっていた。しばらくたって、flotsam books のSNSで紹介されると、「あ、これあのブログのだ」と気づいてすぐさま注文した。

届いてから手にするなり、「なんて素敵な写真集!」と歓喜する。まだ本を開いてもいないのに、その掌におさまるサイズ感と美しい装丁に見惚れてしまった。

シンプルな赤い表紙に白文字のタイトル。文字は地の赤が透けているからか、うっすらとピンク色に見える。装丁はコデックス装とスイス装を組み合わせたような凝った作りで、とても開きやすい。淡い水色の見返しに飯沢耕太郎さんの序文が載っている。厚みのある硬質な表紙で、しっかりした手触りで、高級和菓子の化粧箱のような本になっている。

ページをめくると、日々の営みの中で、ハッとした瞬間、静かにときめいていた瞬間を、丁寧に丁寧に拾い集めたような写真が続いていた。けっして派手でもなく華やかでもないかもしれないけれど、他の誰かではなくて自分だけが気づいてあげられる瞬間。「ハレ」ではなく「ケ」の愛おしさが詰まった写真集だった。

今までにない幸福感をこの写真集で感じることができ、机にそっと置くだけでも、手に取るだけでも、静かな喜びに満たされる感覚になる。製本技術の使いどころのバランス感覚が優れていて、作品としての完成度の高さも素晴らしい。サンエムカラーのブログでの予感が的中し、注文してからの期待値を軽く超えてきた一冊だった。