長島有里枝「家族について/our home」@Maho Kubota Gallery

Maho Kubota Gallery のこけら落とし展、長島有里枝「家族について/our home」を観賞してきた。

長島さんの写真は、遅ればせながら「SWISS」のあたりから見始めた感じだ。いわゆるガーリーフォトブームの中での長島さんは、正直ほとんど知らなかった。その頃はそもそも写真に出会っていなかったから。

2年ほど前に「写真を読む夜」というトークショーを聞いたときに、長島さんの想いを聴くことができて、すっかりファンになってしまった。その時に開催されていた水戸芸術館の「拡張するファッション」を観ることで、長島有里枝の今を感じることができた。

長島さんはずっと「家族」をテーマに写真を撮っている。家族の形態が変わるにつれて、被写体も少しずつ世代が変化しているけど、テーマはあくまで「家族」だ。近作の「SWISS」や「5 Comes After 6」では息子にフォーカスされている。今回の展示でも息子を中心とした日常生活が写し出されている。また展示スペースの1/3をインスタレーションが占めている。古着や端切れのパッチワークを縫い合わせたテントだ。長島さんの母親との共同作業だという。

作品をよく見てみると家族の中でも、親子関係に意識が向いているように感じる。一生のうちで親と子がいっしょに過ごせる時間は思っている以上に少ない。お互いに何かをしてあげられる時間は限られている。長島さんの写真はそういった親子の希少な時間をかみしめ、味わっているような印象を受ける。

長島さんは、ガーリーフォトのアイコンとして括られてしまうことへの不満を持っていた。デビューのきっかけとして受け入れながらも、そのモヤモヤは晴れぬまま。写真の仕事で肌で感じた男性社会への憤りもあったという。自分ではコントロールできない数々のどうしようもなさへの反発が、長島有里枝の作品の原動力になっているのかもしれない。

どうにもならないことなんか脇に置いて、もっと親と向き合い、子にまなざしを向けたいという気持ちがあるのではないだろうか。親子の貴重な瞬間を写真におさめながら、ずっと日常を生きる写真家でありつづけてほしいと思った。