華雪さんの書展を観る

流浪堂で華雪さんの書展を拝見した。題は「みえないものたち」。一文字書の「心」を中心に「異」や「气」を集め展示してあった。小作品とは思えない力強さがあり、自然と目の前の一文字に凝集していく。ともすると意識をもっていかれそうになる。「心」は何通りもあり、同じ「心」でも筆致によって有り様が全く変わってくる。

最近、どうしようも無く心が乱れることがあった。他人も責めて、自分も責めてしまっていた。感情が掻き乱されて収拾がつかなくなった。しばしば体調も悪くした。仔細は省くけど、ここ数日いろいろな支えがあり、今は立ち直って心の乱れも治まってきた。

心は身体と密接に繋がっていて相互に作用する。体調が崩れれば心も崩れ、心が弱れば身体も弱る。心躍れば疲れも飛び、心休まれば身体も休まる。心はとても不安定でいろいろな物事に左右される。些細なことで、すぐにさざなみが立って、波を打ち、渦を巻いてしまう。

華雪さんの書を見ながらしばらく考えてみた。そもそも心は不安定なんだろうか? 華雪さんの「心」は静かに澄み渡るようではないし、かといって荒々しくもない。でも穏やかとも言えない。揺れ動きながらいかようにも形を変えていて、常に動的なのではないか。心は常に形を変え動いているもの。そう考えるだけでも受け止め方が変わってくる。

久しぶりに華雪さんの囚われのない書にふれて、なんだか心の弾力が回復した気がする。今の自分にとってとても有難いひと時だった。