書を額装してもらう

今年の5月に流浪堂で華雪さんの書展を拝見して、一枚の「心」の書に惹かれ購入させていただいた。その作品は裏打ちこそされていたが、額装なしで上辺だけ壁に留めて展示してあった。空調や人の出入りでひらひらと揺らめく様がとても印象的で、額装はお願いせずにシートのみで注文した。

会期後に流浪堂を訪ね、改めて作品を確認してから受け取り店を後にした。道すがらもう一度中を見て観たくなって、駅前のカフェに寄り、コーヒーをテーブルの端に寄せつつ、梱包を解き作品を確認する。やっぱりシートのままでも美しかった。このまま展示の印象を大事にしてもいいかとも思った。でも、この「心」はいつも目にする場所に飾りたいとも思った。数日考えて、いつも頼りにしているポエティックスケープの柿島さんに額装を相談することにした。

作品を平置きしてフレームサンプルを当てながら検討する。あれこれ試しているうちに、上から覗き込む感じがこの作品に合っているようだった。やや細長い作品だったこともあり、龍安寺の石庭を俯瞰で見るような感覚になった。もちろん壁にかけることが前提だけれど、その石庭というか箱庭を覗き込むようなイメージに近づけるために、深さのあるボックスフレームにすることにした。細身のフレームは書に合わせて墨色に塗り、薄らと木目を残す仕上げにしてもらう。覗き込むように近づいて観ることを考慮して、かぶせのアクリルは映り込みの少ない低反射を選んだ。

ひと月ほどして額装が出来上がりましたと連絡があり、早速受け取りに行く。差し箱から出てきた額装の仕上がりに唸った。まさに覗き込むような奥行き感があり、絶妙なバランスでモダンに映える書の額装になっていた。お願いして本当によかった。時に垂直、時に水平で楽しめる華雪さんの書。長く向き合って行きたいと思う。